ドイツ語が上達しない本当の理由~あなたのドイツ語が上達しない理由は努力不足ではありません~

「もう半年も勉強しているのに、ドイツ語が全然上達しない…」

単語帳に載っている単語を丸暗記し、文法書を何度も読み返し、オンラインレッスンも受けている。それなのに、ネイティブの話すドイツ語が聴き取れない。自分の言いたいことがスムーズに出てこない。

もしかして、あなたは「自分には語学のセンスがないのかも」と思っていませんか?

安心してください。ドイツ語が上達しないのは、あなたの能力の問題ではありません。実は、多くの日本人が陥っている「ある勘違い」が原因なのです。

目次

なぜ真面目に勉強しても上達しないのか

文法と単語を覚えれば話せるという幻想

多くの人が「文法ルールを理解して、単語を覚えれば、ドイツ語が話せるようになる」と信じています。だから冠詞の格変化の表を必死に暗記し、動詞の活用を頭に叩き込みます。

しかし、ここに大きな落とし穴があります。

ドイツ語を「読む」「書く」ことと、「聴く」「話す」ことは、まったく別の作業なのです。文字を見て理解することと、音を聴いて理解することは、脳の中の処理手順が異なります。

実際、試験では高得点を取れるのに、ドイツ人と会話すると全く聞き取れない、という人は山ほどいます。これは決して珍しいケースではありません。

聞き流しているだけでは耳は育たない

「ドイツ語の音声を毎日聞き流せば、そのうち聴き取れるようになる」

これも大きな誤解です。

ただ音を浴び続けても、あなたの脳がその音を「認識できる音」として処理できなければ、いくら聴いても雑音のままなのです。それは、ただ水の中にいるだけでは泳げるようにならないのと同じです。

ネイティブと話せば上達するという思い込み

「ドイツ人の先生と会話練習をすれば、自然に話せるようになる」

これも残念ながら正しくありません。

脳の中に「ドイツ語を処理する土台」ができていない状態で会話練習をしても、何も積み重なっていきません。結果として、貴重な時間とお金を浪費することになりかねません。

脳科学が明かした衝撃の事実

バイリンガルとノンバイリンガルの決定的な違い

認知神経科学学会のシンポジウムで発表された『脳科学から見た効果的多言語習得のコツ』という論文に、驚くべき研究結果が記されています。

日本医学英語教育学会の名誉理事長を務める脳神経外科医が行った研究によると、外国語を話せる人と話せない人では、脳の使い方に明らかな違いがあることが分かりました。

バイリンガルの人の場合、日本語を聴いている時と外国語を聴いている時は、脳の中でそれぞれ別の場所が活動しています。つまり、言語ごとに脳の使い分けができているのです。

一方、外国語を話せない人はどうでしょうか。

なんと、外国語を話す時も日本語を話す時も、同じ脳の場所を使っていることが判明したのです。これは、日本語を処理する回路で外国語も処理しようとしているということ。まるで、日本の交通規則で左側通行に慣れた人が、右側通行の国で運転しようとして混乱するようなものです。

つまり、脳の中に「ドイツ語専用の土台」を作らない限り、いくら勉強しても上達しないのです。

日本語とドイツ語の「音色」は根本的に違う

さらに重要な事実があります。

それは、各言語が「パスバンド」という独自の優先周波数帯を持っているということです。これはマサチューセッツ大学と東京大学の共同研究でも明らかになっています。

パスバンドとは、その言語が優先的に使用する音の周波数範囲のこと。人間の背骨を構成する椎骨が音を響かせる場所と関係しており、響く骨の位置が違えば、当然、音色も変わります。

日本語のパスバンドは125Hz~1,500Hzという比較的狭い範囲です。一方、ドイツ語のパスバンドは125Hz~3,000Hzと、日本語の2倍もの広さがあります。

これは何を意味するのでしょうか。

日本語を母語とする私たちの脳は、125Hz~1,500Hzの範囲の音を聴き取ることに特化しています。この範囲外の音は、たとえ耳に届いていても、脳が「意味のある音」として認識しにくいのです。

だから、ドイツ語特有の「ch」の音や、喉の奥を使う「r」、ウムラウトの微妙な違いが聴き取れない。それは、あなたの聴力や能力の問題ではなく、脳がその周波数帯の音を処理する準備ができていないからなのです。

子どもはなぜ簡単に言葉を習得できるのか

「勉強」せずに母語を話せるようになった秘密

ここで、根本的な質問をします。

あなたは日本語を話せるようになるために、文法を勉強しましたか?単語を覚えましたか?

答えは「いいえ」のはずです。

私たちの誰もが、勉強することなく日本語を習得しました。それは子どもの頃、ただひたすら日本語の「音」に浸っていたからです。

赤ちゃんは、意味も分からないまま、周りの大人が話す音をひたすら聴いています。そして、その音を真似しようとします。文法ルールなど知らなくても、自然に正しい語順で話せるようになります。

これが、人間が本来持っている言語習得のメカニズムなのです。

音に浸ることで脳に新しい回路が生まれる

東京大学のチームが英科学誌「Scientific Reports」に発表した研究によると、多言語の音声に触れることで、日本人でも新たな言語を柔軟に習得できることが明らかになっています。

つまり、ドイツ語の「音色」に十分に浸ることで、脳の中に「ドイツ語を処理する回路」が新たに形成されていくのです。これは決して不可能なことではありません。

重要なのは、単語の意味や文法ルールを理解する前に、まずドイツ語独特の「メロディー」「リズム」「音色」を脳に染み込ませること。

音楽を例に考えてみてください。ジャズを初めて聴く人が、いきなり理論を勉強しても、ジャズを感じることはできません。まずは何度も聴いて、ジャズ特有の音楽性に慣れ親しむ必要があります。

各言語は独立した音の世界を持っている

世界には約7,000の言語が存在します。そして、その一つ一つが独立した音の体系であり、固有のパスバンドを持っています。

多くの語学書には「日本語にある音」と「日本語にはない音」という表現があります。しかし、これは大きな誤解です。

正しくは、「日本語にある音」は日本語の中にしかありません。「日本語にはない音」は、日本語以外のすべての言語の中にある音なのです。

例えば、日本語の「あ」とドイツ語の「a」は、同じだと思われがちです。しかし実際には、これらの音を発する際に響く椎骨が違うため、音色がまったく異なります。ギターで弾いたラの音とヴァイオリンで弾いたラの音が、同じ周波数でも違う楽器の音として聞こえるのと同じです。

だからこそ、最初のステップとして、ドイツ語独特の「音色」を味わい尽くすことが重要なのです。この音色に深く入り込むことで、ドイツ語の音響世界全体が見えてきます。

「音の土台」ができてから文法や単語へ

子どもは決して、文法から言葉を学びません。まず音を聴き、音を真似し、音の中で生きます。そして自然に、その言語の構造を体得していくのです。

大人のドイツ語学習も、本来は同じプロセスを辿るべきなのです。

まず、ドイツ語の「音の土台」を脳に作る。その土台ができて初めて、文法や単語が意味を持ち始めます。土台がない状態で文法や単語を詰め込んでも、それらは脳の中で「日本語フィルター」を通して処理され、いつまでも日本語の音韻体系に引っ張られたままです。

実際、ネイティブと会話する前に、まず「ドイツ語でひとり言」が言えるようになる必要があります。頭の中でドイツ語が自然に流れる状態。これが、本当の意味での「ドイツ語の土台」ができた証拠なのです。

あなたのドイツ語は必ず上達します

ドイツ語が上達しないのは、決してあなたの能力のせいではありません。

ただ、学習のアプローチが間違っていただけなのです。

まずは脳に「ドイツ語の音の土台」を作ること。ドイツ語独特の広い優先周波数帯、特有のリズム、独特の音色に、たっぷりと浸ること。子どもが母語を習得したように、音から入ること。

その土台さえできれば、あとは自然に、文法も単語も、あなたの中にスムーズに入ってきます。ネイティブの話すドイツ語が、以前よりもはるかにクリアに聞こえるようになります。

あなたのドイツ語学習は、今日から変わります。音と向き合う勇気を持ってください。

この記事を書いた人

20代半ば頃から様々な言語に触れて、勉強するも思うように身につかず、思うように話せない経験を繰り返す。しかしある時、約4万時間に及ぶリスニングと、約2万時間に及ぶ音読を実践する中で、語学習得のヒントは子どもの言語習得過程にあると気づく。その後、自身で試行錯誤を繰り返し、第3の言語習得メソッドを開発。現在は「おとなのためのマルチリンガル講座」の講師を務め、多言語を学びたい多くの人たちに自身のメソッドを教えている。

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