できる!できる!できる!

できる!できる!できる!

なんという前向きな言葉でしょう。やる気がみなぎってきそうですね。

実はこの言葉
昔、脳覚醒系のセミナーに
参加した際に聴いた、

音声フォルダの中に入っていた
トラックの一つなのです。「できる」という日本語の動詞は、
英語でいう「can」や
「be able to」に相当します。ドイツ語では「können」、
フランス語では「pouvoir」となります。
この動詞は可能性や能力について
述べる際に使われます。なーんて野暮な説明をするまでもなく、
普通の日本人だったら
「できる」という簡単な言葉くらい
余裕で聴き取れますよね?


ところがこの

「できる!できる!できる!」

という音声を12時間連続で
聴き続けるとどうなるでしょうか?


5時間を超えたあたりから脳が変容して、
「できる!できる!できる!」が

「できない!できない!できない!」
に聞こえたりします。

さらに時間が経過すると、
「できる!できる!できる!」が
「福神漬けだ!」に聞こえたり、

「あらどっこいしょ!」に
聞こえたりします。


理性では
「できる!できる!できる!」
という音声だとわかっていても、

脳が変容した状態だと、
どう頑張ってもそのようにしか
聞こえないのです。


50年以上も日本人やっているのに、
これでは日本語の
リスニングテスト不合格ですね。笑


もう一つエピソードをご紹介します。

昔仲の良かったフランス人の友達が
自宅に遊びに来たときのことです。

「奇人たちの晩餐会(Le Dîner de Cons)」
というフランスのコメディー映画を
一緒に観たのですが、

彼は

Qu’est-ce que vous faites, mercredi prochain? (来週の水曜日は何をするの?)

という台詞の mercredi(水曜日)を
二度も vendredi(金曜日)
と聞き間違えました。


時差ボケの影響が
長引いていたのかもしれませんし、

「この文脈ではこうだ!」という
思い込みが彼の頭の中に
あったのかもしれません。

要するにたとえネイティブであろうと、
その時の体調や心理状態によって、

人間の脳は聴覚にさまざまな
トリックを仕掛けてくるようです。


そうなると
「英語のリスニングテストで
 100点満点中90点だった!」とか、

「ポルトガル語では「o aberto (ó)」
(開口音の o)と
「o fechado (ô)」(閉口音の o)の
 区別に注意しましょう!」というのは、

脳の複雑精緻なメカニズムを前にすると、瑣末なことに思えてなりません。

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