| 世の中に出回っている多くの語学書の 『文字と発音』の項目には、、、 「日本語にある音」と 「日本語にはない音」という 表現があります。 ですが、これはとんでもない誤解です。 最初に結論を申し上げますと… 「日本語にある音」は、 日本語の中にしかありません。 「日本語にはない音」は、 日本語以外のすべての言語の中にある音です。 他の言語についても 同じことが言えます。 例えば… 「スペイン語にある音」は、 スペイン語の中にしかありません。 「スペイン語にはない音」は、 スペイン語以外の すべての言語の中にある音です。 スペイン語の他、 イタリア語とスワヒリ語にも 5つの母音「a, e, i, o, u」がある (ただし、イタリア語の「e」と「o」には 開口音と閉口音の区別があるため、 音素としては7つの母音が存在する) から、少なくともこれら5つの母音は 同じじゃないかと 思われるかもしれません。 ですが、、 ここに音声学の落とし穴があります。 それでは試しに次の文字列を Google翻訳のウィンドウにコピペして、 ・日本語 ・スペイン語 ・イタリア語 ・スワヒリ語 を選択してそれぞれスピーカーの アイコンを押して音声を 再生してみてください。 Aomori, Sendai, Tokyo, Yokohama, Nagoya, Kyoto, Osaka, Hiroshima, Matsue, Fukuoka 日本語を選択して再生すると 機械ならではの不自然さはあるものの、 基本的に日本語として違和感はないはずです。 スペイン語、イタリア語、 スワヒリ語を選択して再生すると、 各言語独特の「音色」が 色濃く出ることに気づきます。 日本人であれば、 これらの再生音を日本人の発話だと 思う人はおそらくいないでしょう。 この「音色」の違いを決定づけるものが、 パスバンドです。 パスバンドとは言語によって 優先的に使用される周波数帯のことで、 各周波数帯は人間の背骨(脊椎)を 構成する椎骨に対応しています。 |
| 響く骨の位置が異なれば、 当然、音色(声色)にも違いが出てきます。 日本語の「あいうえお」は、 イタリア語の「aiueo」と同じである、 という主張は、ギターで弾いたA音も ヴァイオリンで弾いたA音も「同じ音」と 見なしてしまうのと同じくらい乱暴です。 「3.141592も3も 円周率ということにしとこうや」 みたいな感じでしょうか。笑 世界で話されている 言語の数は約7,000と推定されています。 その一つ一つの言語が 独立した音の体系であり、 固有のパスバンドを持っています。 その結果、固有の音色を持っているのです。 ですから最初のステップとして、 この「音色」を味わい尽くすことによって、 各言語の音響世界に深く入ることができます。 母音や子音といった音声学の概念は、 各パスバンドの中でこそ、 意味のあるものになります。 つまり、言語の習得において パスバンドが第一義的であり、 音素は第二義的なものです。 新しい言語を学ぶたびに 「日本語にある音」と「日本語にはない音」 という捉え方をするのではなく、、。 すべて日本語にはない音、 日本語とは全く別の独立した 体系の中にある音。 と、捉える方がシンプルで 分かりやすいですし、 それにより、 その言語の全体像が見えてきます。 |
最後までお読みいただき、 ありがとうございます。 |
