英語の聞き取りが上達しない本当の理由|脳科学が明かす「聴く土台」の作り方

「シャドーイングを毎日続けているのに、聞き取れるようになった実感がない」 

「ディクテーションも試したけれど、結局ネイティブのスピードについていけない」 

英語の聞き取りを上達させようと、ありとあらゆる方法を試してきたあなた。 それでも、ネイティブの会話を前にすると、聞き取れない…そんな経験を繰り返していませんか?

「自分には向いていないのかもしれない」 そう感じるたびに、心が折れそうになる気持ち、よく分かります。

ですが、断言します。 あなたの聞き取りが伸びないのは、努力が足りないからではありません。 世間で言われているリスニングの上達方法のほとんどが、そもそも脳の仕組みに合っていないのです。

目次

「英語をたくさん聴けば慣れる」という大きな誤解

英語の聞き取りの上達法と聞いて、まず思い浮かぶのは「とにかく英語を浴びる」というアプローチではないでしょうか。

通勤中にポッドキャストを流す。 寝る前に映画を字幕なしで観る。 お風呂の中でも英語の音声を聴く。

確かに、英語に触れる量は増えていきます。 しかし、これだけでは聞き取れるようにならない理由が、脳科学の世界ではすでに明らかになっています。

私たち日本人の脳の中には、日本語のみの環境で生まれ育った過程で作られた「日本語フィルター」というものが存在します。 このフィルターは、日本語の音域に最適化された強力なしくみで、それ以外の音を「雑音」として自動的にカットしてしまうのです。

言語にはそれぞれ「パスバンド」と呼ばれる、その言語がよく使う倍音の優先周波数帯があります。

例:

・日本語:125Hz 〜 1,500Hz
・イギリス英語:2,000Hz 〜 12,000Hz

驚くべきことに、日本語とイギリス英語のパスバンドは重なっていません。 イギリス英語は、日本語よりも高い周波数帯の音を使うのです。

つまり、英語をいくら聴いても、その音は日本語フィルターによって弾かれ、脳に届く前にカットされている状態。 脳に届いているのは、輪郭がぼやけたスカスカの音だけ。 これでは「慣れる」どころか、何時間聴いても上達のしようがありません。

多くの人がハマる「聞き取り上達方法の落とし穴」3つ

世の中で広く信じられている英語の聞き取り上達方法には、脳の仕組みから見て致命的な弱点があるものが少なくありません。

➀シャドーイングで「聴く感覚」を育てようとする

ネイティブの音声を追いかけて発音するシャドーイングは、取り組む方が多い練習法です。 しかし、聴き取れていない音をいくら口で真似ても、本来の英語とは異なる発音パターンが定着してしまいます。

フランスの耳鼻咽喉科医のトマティス博士は「耳で聴き取れない音は、発音できない」と述べています(トマティス効果)。 聴覚の土台ができていない状態でシャドーイングを続けても、間違った発音となるのです。 本物の英語からは、むしろ遠ざかってしまうおそれすらあります。

➁ディクテーションで聴き取りを鍛えようとする

聴いた英語を書き取るディクテーションは、効果の高い学習法に見えます。 ですが、これは「文字で英語を覚える」発想から抜け出せていません。

脳が英語をダイレクトに受け取れていない以上、書き取り作業は「聞こえた気がする音を、知っている単語の文字に当てはめる作業」に変質してしまいます。 これでは、聴く感覚そのものはいつまでも育ちません。

➂単語と意味を覚えてから聴き取りに進もうとする

「まずは語彙を増やしてから聴く練習へ」という方法も、よくある落とし穴です。

問題は語彙の量ではなく、音そのものが脳に届いていないこと。 日本語フィルターは、あなたがどれだけ単語を知っていても、高い周波数の音を切り捨て続けます。 覚えた単語が聞き取れた気がするのは、断片的に拾えた音から脳が必死に推測で補っているからなのです。

聞き取れる脳は「世界中の言語」で作られる

では、本当の意味で英語の聞き取りを上達させるには、何が必要なのでしょうか。

答えは、英語だけを聴き続けることではありません。 世界中の多様な言語の音を聴くことです。

マサチューセッツ大学と東京大学の共同研究では、英語だけを聴いたグループよりも、英語に加えて世界のさまざまな言語の音を聴いたグループの方が、英語をはるかに正確に聞き取れるようになったことが報告されています。

世界の言語は、それぞれ異なるパスバンドを持っています。 ロシア語、ドイツ語、フランス語、スペイン語など…これらの言語は日本語とは異なるパスバンドを持っています。つまり、日本語のパスバンドの外側にある「未知の音」ばかりです。

ここで、ロシア語、ドイツ語、フランス語、スペイン語といった、互いに異なるパスバンドを持つ言語を、次々と脳に聴かせてみるとどうなるでしょうか。

脳は、これまで「日本語の周波数帯だけを受信すればいい」と思い込んでいました。 ところが、明らかに日本語ではない、しかも互いに音域の違う言語が次々と耳に飛び込んでくると、脳は強い刺激を受けます。 「あれ?こんなに広い音の世界があったのか」と。

すると、脳はようやく気づきます。 たった一つのパスバンドにチャンネルを固定したままでは、目の前の音についていけない、と。 そこで脳は、自らパスバンドを広げる方向へと動き出します。 古いラジオが、決まった一局しか受信できない状態から、世界中のチャンネルを拾える広帯域のラジオへとアップグレードされていくようなイメージです。

日本語フィルターという、長く閉ざされていた窓がゆっくりと開きはじめると、これまでカットされていた英語の音も、自然と脳に届くようになります。 そして一度開いた窓は、簡単には閉じません。 聞き取れる音が増えれば、脳の中に「正しい音のデータ」が自然と積み上がり、英語の聞き取りは加速度的に上達していきます。

これは、子どもが母国語を覚えていくプロセスとまったく同じ。 必要なのは、勉強ではなく、脳の土台を整えることです。

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「シャドーイングを続けても聞き取れるようにならない」
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そんな悩みを抱えてきたなら、それはあなたのせいではありません。 日本語フィルターを外すという一番大切なステップを、誰も教えてくれなかった。それだけのことです。

私たちが提案しているのは、英語だけでなく世界中の言語の音を聴くことで、英語を鮮明に聞き取れる脳を育てる「ネイティブ・セルフラーニング」というメソッドです。

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この記事を書いた人

20代半ば頃から様々な言語に触れて、勉強するも思うように身につかず、思うように話せない経験を繰り返す。しかしある時、約4万時間に及ぶリスニングと、約2万時間に及ぶ音読を実践する中で、語学習得のヒントは子どもの言語習得過程にあると気づく。その後、自身で試行錯誤を繰り返し、第3の言語習得メソッドを開発。現在は「おとなのためのマルチリンガル講座」の講師を務め、多言語を学びたい多くの人たちに自身のメソッドを教えている。

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